畳REBIRTH進行中 ~イ草刈り取り編~
- 健太郎 立花
- 7月26日
- 読了時間: 4分
皆さん、こんにちは。
7月16日、朝露がまだ残る圃場にて、イ草の刈り取りを行いました。
畳REBIRTHプロジェクトにおけるリアルな成果物と言っても過言ではありません。
この畑は、春先に「文化財堆肥」(文化財廃材由来の堆肥)を撒いた圃場。
約半年にわたり見守ってきたそこには、青々としたイ草が風に揺れ、どこか誇らしげにも見えました。
特に今年は、酷暑続きの上に梅雨明けが早まりましたが、枩島さんご一家が丹念に管理されたおかげで、一本一本がしっかりと太く、そしてしなやかに育っていました。
イ草刈り取り
刈り取り作業は、早朝からご家族総動員でスタート。
その面積3反、約900坪に及ぶ圃場をイ草専用の収穫機がフル稼働します。
マシンとはいえ、その操作には熟練の技術が必要で、土の状態やイ草の長さを見ながら、速度や角度を微調整していきます。
その昔、手狩りで行っていたことを想像すると、気が遠くなる思いです。


まっすぐに育ったイ草が一列ずつ丁寧に刈り取られていく様子は、もはやアートと言っても過言ではありません。
時折雲の隙間から太陽が顔を覗かせるのですが、それはまるで深緑のイ草に射す後光のようでした。

泥染&乾燥
刈り取ったイ草は、そのまま「泥染(どろぞめ)」へ。
天然の染土を使ってイ草を染め上げるこの作業は、い草に独特の風合いや艶を与えるだけでなく、防虫・防カビの効果をもたらします。
泥染だからと言ってイ草が灰色になるわけではなく、イ草の表面をツヤツヤにコーティングするイメージ。
さしずめ、イ草のトリートメントと言ったところでしょうか。
これにより、イ草が乾燥しやすくなることに加え、あの畳特有の香りが出てくるのだそう。染土の種類や濃度、浸ける時間によって、仕上がりの表情が変わるといい、まさに経験と勘がものを言う、職人の技の世界です。
「乾燥」工程では、乾燥釜で60℃の熱風を送り、約18時間かけて乾燥させていきます。
一本でも色ムラや反りが出れば、畳としての仕上がりに影響するため、ここでもまた、細やかな気配りが必要とされます。
枩島さんによると、文化財堆肥(文化財廃材由来の堆肥)を撒いたイ草は、身の詰まりが良く、色艶が良いとのこと。
資源循環のみならず、良質なイ草の生産に貢献できたことは何よりの喜びです。

【作業風景動画】
スケジュール
冬の植え付けから半年、佳境である収穫期を無事に終えることができました。
今後は、乾燥させたイ草を選別し、畳表の状態に織り上げていく予定です。

Joshuの一畳へ——想いの継承
Joshu(ジョーシュ/畳主)の皆さまの想いとともに歩むこのプロジェクトにおいて、「原材料を育てる」という工程が、どれほど豊かな価値をもっているか。
現地に立つことで、その重みを深く実感しました。
そして、このイ草たちは、来年、御花の大広間へと敷き込まれていきます。
ただの床材としてではなく、「想い」が宿った一畳として。
文化の再生と循環を象徴する存在として。
Joshuの皆さまの一畳一畳が、培われた歴史と未来とをつなぐ触媒としての役割を果たすことになるのです。
そして、連日Joshuへのお問い合わせをいただいています。
Joshuの皆様には、Joshu認定書と文化財見学パスをお贈りするのですが、ある方からはお喜びのお声として以下のような写真が送られてきました。
【Joshuお申込みページ】

ソーシャルグッド
これにてイ草の栽培から刈り取りまでの工程が終了しました。
あらためて、自然に向き合いながら文化を創造することの重要性を感じたところです。
風を読み、雨風に耳を澄ませ、イ草の表情を捉える——
生産者さんの一挙手一投足に日本文化の根幹があると感じさせられました。
文化は、形として残すだけではなく、「誰か」が守り、つなぎ、届けることで初めて未来へと受け継がれていくものです。
その一翼を担うイ草刈り取りの工程もまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
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