畳REBIRTH進行中 ~イ草栽培編~
- 健太郎 立花
- 5月8日
- 読了時間: 4分
更新日:5月23日
皆さん、こんにちは。
SAMURAI REBIRTHが取り組む畳REBIRTHプロジェクトは、柳川藩主立花邸 御花(文化財)の敷地内で廃材化した資材を活用し、100畳間の畳を再生させようというかつてないチャレンジです。
そしてこの度、プロジェクトは重要なフェーズへ。
熊本県八代市、イ草の一大産地であるこの地で、広大な圃場を営む枩島さんのご協力のもと“文化財由来の堆肥を撒く(文化財堆肥)”という貴重な体験を得られました。
今回はその様子と、イ草栽培のプロセスについてご報告いたします。
イ草の苗の植え付け
一部ご報告が遅れてしまいましたが、昨年末(12月中旬)今回の文化財堆肥の散布の前工程であるイ草の苗の植え付けを行いました。
イ草にとって、寒い冬を越すことはとても重要です。
気温の低い時期にじっくりと時間をかけ、しっかりと根を張らせることが、後に力強く茎を伸ばすための基礎となるためです。
この小さな苗たちは、冬の間に地中で静かに命を蓄え、春の陽射しとともに一気に成長をはじめます。
静かに、そして確かに、文化の再生が始まっている、そう感じさせられる瞬間でした。


イ草農園との協業
その苗たちは現在、青々とした茎を広げ、膝上ほどの高さにまで成長しています。
しかし、ここで収穫されるわけではありません。
イ草は一度、現在の茎をすべて刈り取りのですが、これは「中間刈り」と呼ばれる工程で、次に伸びる新芽をより太く、丈夫にするためのひと手間なのだそう。
その直前に、私たちは“文化財堆肥”を手撒きしました。
あらためて補足しますが“文化財堆肥”とは、文化財施設から回収した(廃材化)落ち葉や古畳のイ草に、もみ殻、赤土、米ぬか、鶏ふんなどを加えて、数か月かけて発酵させた「文化を土に還した堆肥」です。
時間をかけ完熟させた、無臭で豊富な養分を含む堆肥でもあります。
これを撒くことで、畳REBIRTHの象徴とも言える「循環」が、具体的なカタチになったと言えます。
生産者である枩島さんの本プロジェクトに対する共感、そしてサポートがなければ成し得ないコラボレーションとなりました。

※堆肥サンプルと成分分析結果報告書(環境研究センター発行)

イ草栽培の年間スケジュール
ここで、イ草栽培のプロセスを簡単にご紹介します。

努力の上に成り立つ「日本文化の美しさ」
イ草の栽培は、自然との対話の連続です。
天候、水の量、気温、病害虫・・・
そのすべてに目を配り、長い時間をかけて一枚の畳を支えるイ草を育て上げる。
私たちが何気なく触れている畳の一枚一枚の裏には、こうした見えない努力と技術が積み重ねられています。
そして今、このイ草産業そのものが衰退の危機に直面していることは、皆さんもご存知の通りです。
ライフスタイル・ニーズの変容、価値観の多様化などにより、安価な外国産が市場を席捲、国内生産では採算がとりづらくなっていると言われます。
時代の流れによる安価な製品の流入、それ自体を否定するつもりはありませんが、手間を惜しまず丁寧にイ草を育て続けている生産者がいることを忘れてはいけません。

一片のイ草から社会を変える
畳REBIRTHは、単なる農業支援ではなく、文化財をテーマにした循環の再構築です。
そこには文化、農業、土、そして人々の営みが静かに交差しています。
私たちは、文化財を単なる“保存対象”とするのではなく“未来を創る素材”と捉えています。
落ち葉や古畳が堆肥となり、やがてまた畳として再生する。
文化とは“誰か”が残してくれるものではなく“私たち”が関わることで繋いでいくもの。
たとえ一片のイ草であっても、私たちはそこから多くを学び、地域再生の一翼を担う当事者意識を高めるきっかけとなる。
そんなあり方を、畳REBIRTHは体現しています。

ソーシャルグッド
「文化とは誰のものなのか?」
そして「どのように残すべきなのか?」
今回、私は多くの気づきを得られ、物事の本質を捉えることができたように思います。
イ草という、日々の暮らしに根差した素材からはじまる文化の継承。
そこにこそ、SAMURAI REBIRTHが見据える“社会変革”の思想があります。
そんな想いを抱きながら、イ草農園に赴き生産者の枩島さんと共に自然に向き合うこともまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
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