還る。
- 健太郎 立花
- 3 日前
- 読了時間: 5分
更新日:2 日前
皆さん、こんにちは。
ようやくこの日を迎えることができました。
2026年1月12日。
舞台は柳川藩主立花邸 御花・大広間、文化財廃材を使用した再生畳が無事格納されました。
言わば、サーキュラーエコノミー(以下:CE)にもとづく文化財の新たな保存活用法の確立。
構想から2年半、大変長い道のりではありましたが、プロジェクトサポーター、Joshu(畳オーナー)、御花メンバー、多種多彩な人材、そしてネットワークや想いをつなぎゴールを迎えることができたこと、すべての皆様に感謝です。
今回は当日の模様をお届けいたします。
畳の格納
畳REBIRTH(※1)によって再生された畳は、Joshuの皆さまの立ち合いのもと、大広間へと格納されました。
これまでのプロセスを振り返ると、第一フェーズ(堆肥化プロセス)においては、コンポストアドバイザーの鴨志田さんのサポートなくして成しえることはできませんでした。
第二フェーズ(イ草生産・畳製造プロセス)においては、イ草製品メーカーの(株)イケヒココーポレーション様、畳製造販売の(株)秋吉様、そしてイ草農家の枩島農産様など、
畳のプロフェッショナルが結集して成せた業だと確信しています。
その他多くのFellows(※2)の存在も忘れてはなりません。
澄み切った空気の中、畳が一枚一枚職人の手によって丁寧に運ばれ敷き込まれていく様子は、まさに「新たな文化財が芽吹く瞬間」でした。
畳の裏面には、Joshuの皆様のお名前・メッセージ・ロットナンバーが刻印されているのでが、皆様の想いと共に、大広間が脈を打つように再生していく生命力を感じることができました。
※1 文化財廃材を堆肥化し、その堆肥でイ草を栽培・畳製造を行うCEにともづく再生プロセス
※2 プロジェクトを根幹から支えてくださった主要メンバー



トークセッション
畳の格納に先立ち、「samurai cultivate lounge」と題したトークセッションを開催しました。
モデレーターを務めてくださったのは、NHK「おはよう九州・沖縄」でニュースと気象を担当している佐々木理恵さん。
文化、CE、農業、経営といった異なる領域を横断しながら、対話を丁寧に深めていくことができました。
私が最初にお話ししたのは、「samurai cultivate lounge」という名称に込めた想いです。samuraiは日本の伝統や文化を、cultivateは研鑚を意味します。
多様なバックボーンを持つ方々と、ラウンジで過ごすような距離感で対話しながら、文化を未来へつなぐための“芽”を育てていく。
そんな場をつくりたいという想いから、このタイトルをつけました。

畳REBIRTHの構想起点は、文化財運営の現場で感じていた強い違和感です。
広大な敷地から出る落葉が焼却され、倉庫には役目を終えた古畳が大量に眠っている。
国指定名勝という価値ある場所でありながら、資源が循環していない現実にもどかしさを感じていました。
その違和感に対し、堆肥化・資源循環の専門家である鴨志田純さんの知見が重なり、畳REBIRTHは動き始めます。
印象的だったのは、鴨志田さんが初めて大広間に足を踏み入れ、私が“ぜひ寝転がってみてください”と促した時のエピソードです。
文化財と自分との境界が薄れていく感覚に包まれ“文化財を未来へ継承するには、距離を置くのではなく愛着を持てる関係性が必要なのではないか”という気づきを得られた。
そのように彼は言いました。
この感覚は、私自身が大切にしてきた考えとも重なっていたのです。
堆肥化の過程で直面した苦労話に加え、イ草の生産を担っていただいた八代の農家・枩島さんにもご登壇いただきました。
“文化財堆肥”を用いた圃場のイ草が最も高品質だったこと、そして豪雨被害を奇跡的に免れたエピソードから、この畳が多くの偶然と必然の積み重ねによって生まれたものであることをあらためて実感しました。
私が常に意識してきたのは、理念だけで人は動かないということです。
関わった先にどのようなアウトプットが生まれるのかを可視化し、手触り感を持ってもらうこと。
その重要性を、太宰府天満宮の「くすかき」を例に挙げながらお話しました。
【くすかき】

格納式および神事
トークセッションの後、畳の格納式と神事を斎行。
世界医師会会長/横倉義武氏、Joshu第一号である(株)秀電社 代表取締役/秀嶋克仁氏にお手伝いいただきながら、最後の1枚を敷き込みました。
Joshuの皆様が自身の畳の場所を探す姿は、まるでわが子の見守る親のよう。
その存在を確かめる姿から、単なる支援や寄付ではなく、「自らが文化財を共につくる当事者である」という意思が伝わってきます。

【社会医療法人 弘恵会 ヨコクラ病院】
【株式会社 秀電社】

ここからは、新たに生まれ変わった畳が文化財としての役割を果たし続けられるよう祈りを捧げる時間です。
Joshuの皆さまが、ご自身が関わった畳を見つけ、そっと手を触れ、その感触や香りを確かめていらっしゃるのが印象に残っています。
畳REBIRTHが「畳を再生するプロジェクト」であることのみならず、「想いを重ねていく営み」なのだ。
神事が斎行される中、私はあらためてそう感じました。

畳の上で自然と交わされる会話や笑顔も印象的でした。
初めて顔を合わせたオーナー同士が、畳をきっかけに言葉を交わし、互いの関わり方や想いを共有していく。
その光景は、このプロジェクトが人と人をつなぐ場として機能していることを物語っていました。
文化財は、誰か一人が守るものではありません。
こうして想いを重ね、触れ合い、語り合う。
そんな小さな志はやがて大きな希望となり、次の世代へと継承されていくものなのかもしれません。

ソ-シャルグッド
畳REBIRTHは、畳を再生させること自体が目的ではありません。
文化財から生まれた資源を地域で循環させ、そのプロセスに人が関わることで、文化財を「ジブンゴト化」していく。
この一連の取り組みは、経済性と社会性、そして文化的豊かさを同時に育む唯一無二な実践です。
トークセッションおよび畳の格納式典を行う中で、文化財の保存は誰かに委ねるものではなく、関わる人の数だけ未来の可能性が広がるものだと実感しました。
私たちはこれからも問いと実践を重ねていきます。
そんな愚直な活動、イベント開催もまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。



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