EV(電気自動車)から学ぶ文化財の未来的活用法
- 健太郎 立花
- 2024年12月4日
- 読了時間: 4分
皆さん、こんにちは。
テスラに代表されるように、所謂自動車メーカーではないプレイヤーが台頭し、
業界の新旧覇権争いが激化しています。
そんな中、液晶ディスプレイ技術を強みとするシャープが、EV(電気自動車)の開発・販売に注力する方針を発表しました。
自動車の「止まる時間」に着目
自動車は日々私たちの生活に欠かせない存在です。
しかし、その多くの時間は「止まっている」のです。ここではこの状態を無価値と定義します。
シャープが発表した電気自動車(BEV)「LDK+」は、この事実に着目し、自動車を単なる移動手段から生活空間へと再定義する画期的なコンセプトを提案しました。
「LDK+」は車内をシアタールームやリモートワークスペース、子どもの遊び場など、多目的に活用可能な空間として設計されています。
特に65インチの大型ディスプレイや窓に設置された液晶シャッターなど、生活空間としての快適性を追求した設計が目を惹きます。
これにより、自動車が1日の95%を駐車場で過ごす時間も、価値ある体験の場へと生まれ変わります。
時間と空間の有効活用、そしてそこから生み出される新たな価値。
このアイデアには文化財保存活用の領域にも通じるヒントがあるのでは?
と、気づきを得られました。

「活用されない時間」を再生
文化財もまた、その多くが「静かに佇んでいる時間」となっています。
かつて多くの人々に利用され、生活の一部だったこれらの場所は、現代では観光地や展示スペースとしての役割が中心になっています。
しかし、それだけではその潜在的な価値を十分に引き出しているとは言えません。
私たちSAMURAI REBIRTHは、この「活用されない時間や空間」に着目し、文化財の新たな価値を生み出す取り組みを行っています。
その一例が「畳REBIRTHプロジェクト」です。
【畳REBIRTH 概要】

古い畳を再生し、文化財としての価値を守るだけでなく、その背景にある歴史やストーリーを現代社会に共有することで、単なる保存活動にとどまらない意義を創出しています。
また、文化財を現代の生活と融合させる新しいアイデアとして、畳のオーナー精度や体験プログラムも提案しています。
例えば、柳川藩主立花邸 御花の大広間に格納される畳に自分(オーナー)の名を刻み、オーナーとして文化財保存に関与できる仕組みです。
これにより歴史的な場所がより身近に感じられると同時に、文化財の本質的意義の醸成を図れるものと考えています。
私たちはこのプロセスを「文化財のジブンゴト化」と呼んでいます。
“場”の再定義
自動車が「移動」のみならず「生活の場」へと進化しているように、文化財もまた「過去の遺物」ではなく「現代の価値を生む場所」へと再定義されるべき時が来ています。
例えば、車内がシアタールームに変わるように、文化財の大広間が地域コミュニティの集いの場や現代アートの展示空間として活用される未来を想像してみてください。
これは過去と現在をつなぐ新たな橋渡しの形と言えるのではないでしょうか。


柳川藩主立花邸 御花の大広間では、これまでライブイベントや展示会、古典芸能などを開催。
空間の価値の最大化に加え、その可能性を追求してきました。


目指す未来と社会的価値
過去の記事でも繰り返しお話ししていますが、私たちは文化財を保存するだけでなく、新たな活用法を提案・実践することで未来を創ろうとしています。
これには、ステークホルダー(地域住民、観光客、企業、自治体など)が主体的に関与できる仕組みが不可欠です。
畳REBIRTHプロジェクトなどは、敢えて文化財に触れ、関われるようなコンテンツであり、目に見える形のアウトプットにより参加者の達成感が満たされるような設計となっています。
また、文化財が「止まる時間」を新たな価値に変えることは、持続可能な社会づくりにも寄与するものと考えています。
自動車の「止まる時間」に快適な空間生活を生み出す発想と同様、文化財もその「止まる時間」を活かして、現代人の心を癒し、インスピレーションを与える場として機能するのではないでしょうか。
引き続き私たちは、文化財保存と活用の枠を超えた取り組みを進めてまいります。
過去の価値を守りつつ、未来に新たな価値をつなぐ。
それが私たちの使命です。
ソーシャルグッド
文化財が「止まっている時間」に価値を見出すことは、単なる保存を越えて、現代社会に新たな意味を提供する挑戦です。文化財の保存の枠を超え、いかに地域社会や人々の意識に働きかける新たな価値を生み出せるか。
そのヒントを、シャープの「LDK+」から見出すこともまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。



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