リペアとその影響の考察
- 健太郎 立花
- 2023年11月10日
- 読了時間: 4分
「リペア」という書籍。
ジャケ買い(装丁重視)して当たったためしはないのですが、これは自然に体内沈着するかのような心地良さと納得感。
これは良書!と判断する基準は、私にとってはそれなのかもしれません。
===========================================
リペア
「使い捨て社会」から「修理・修復社会」へ
ペーテル・エールディ、ジュジャ・スベテルスキー 著
高見典和 訳
2,700円+税
日本評論社
===========================================

私なりのリペア
比較的モノもちの良い私は、文字通りリペアをしながらモノに対峙しています。
革靴、バッグ、衣類、筆記用具など。
一例をあげると、こんな感じ。
【革靴】10年選手の革靴たち
エドワード・グリーン
JMウェストン
オールデン
クロケット&ジョーンズ
ダナー(ワークブーツ)
など
<リペア実績>
・定期的な磨き
・ソールの張替え


【衣類】
オーダースーツ
<リペア実績>
・ほつれの修理
・サイズ直し
パタゴニア
フリース、Tシャツ、ショーツ
<リペア実績>
・ほつれの修理、ファスナー紐付け
パタゴニアは、環境配慮・自然保護に徹したアパレルで有名。
ブランドメッセージとしては、購入よりも持続可能性に重きを置いていることは言うまでもありません。

出典元:patagoniaブランドサイト
【バッグ】
TUMI(3代目)
<リペア実績>
・取手の修理

【ステーショナリー】
モンブラン(10年選手)
<リペア実績>
・ペン先の交換

これらに加え、日常的に生業としている文化財の保存と活用です。
モノを大切にすることは、愛情をもって接すること。
愛情を持ち接していると、結果的にその使用期間が長くなり、モノとしての寿命が長くなることを意味します。
私の場合、愛着を持てそうもないモノだと購入する気になれなかったり、それを守り続ける気にもなれないのですが、一方で廃棄型の消費そのものに価値を見い出せないというスタンスが、モノもちの良さに繋がっているようにも思います。
リペアが教えてくれること
私のそのようなスタンスは、文化財と付き合う上での手法に影響を与えています。
どうせ修理するなら自らが関わりたい。関わるべき。
そう考えた上で、以下のような思考の進化を辿りました。

私が提唱する「サーキュラーエコノミーにもとづく文化財の保存活用の手法」の発想起点はここにあります。
話はそれますが、皆さんはこのような経験はないでしょうか?
某セレクトショップのSALEやアウトレットモールでのシチュエーション。
大量に居並ぶ輸入ブランド・人気ブランド特価品を勢い勇んで購入するもタンスの肥やしに・・・
結局のところ一軍で活躍するのは、生成りで肌馴染みの良い定番のチノパンやジーンズ。
奇をてらったデザイナーズブランドのシャツよりも、コットン100%のボタンダウンシャツだったり。
本当に自分が好む色味についても、いくつかに限定されるのではないでしょうか。
私の場合は紺、グレー、白に絞られてきます。
⇒年齢と共に地味に・・・
この傾向を理解することで、無駄なコスト(タンスの肥やしや廃棄)を軽減することができるように思います。
モノは粗末に扱わないほうが得なのです。
人や地域社会までも
皆さんもおわかりの通り、大量生産・大量消費を前提とした使い捨て社会は持続可能ではありません。
モノのリペアに限らず、人間関係や地域とのつながりについても、リペアは有効なのではないでしょうか。
組織マネジメントの観点からは、長期的に安定した人間関係を維持することにつながるでしょう。
同時に、リペアはリーダーには不可欠な資質と言えるかもしれません。
⇒弱った組織、人に対して適切なコミュニケーションや措置、改善策の提案。
今なお続く空き家問題。
リペアの考えを持ち合わせた志高い賢者によって、地方では今なお古民家再生に湧き、国は多くの補助・助成のメニューをそろえています。
単なる無駄の排除、環境配慮といった論点にとどまらず、一人ひとりが考え行動することのできる力強いコミュニティー、レジリエンス(回復力)を高めることで外部環境にもいち早く順応することができる持続可能な地域社会の構築。
リペアは必ずしも(少なくとも短期的には)地域社会に大きな利益をもたらすものではありませんが、災害が多く資源に乏しい日本国にあっては、長期的な観点からは見逃すことのできない基礎運動のひとつで、運動能力を最大化させる体幹であるように感じています。
ソーシャルグッド
リペアはモノのみならず、人や組織、地域社会など、取り扱いが難しく正解のない領域にこそ必要な考え方。
ハンガリー出身の二人の学者から気づきをいただいたことに感謝です。
モノの修復を通じて、人間関係・地域社会のリペアを考察することもまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
では。



コメント