循環経済による文化財の保存活用
- 健太郎 立花
- 2023年5月6日
- 読了時間: 3分
更新日:5月29日
皆さん、こんにちは。
私たちが日頃から文化財を管理運営する中で意識していることは、目の前の対象物がホンモノであるかどうか。
つまり、(ゲスト目線で)目に見える範囲で嘘偽りがあってはならないわけです。
そのため、朝一番の仕事は掃除になります。
非日常感を担保すべく、掃除機をかけ、水撒き用ホースや脚立を隠し、置き去りにされた館内見取り図を拾い、斜めになった掛け軸を直し、現代物をなるべく目立たない場所に移動させるのです。
大広間
非日常的ホンモノの象徴として歴史的日本建築があります。
「柳川藩主立花邸 御花」においては、文化的価値の構成要素のひとつである100畳間の空間「大広間」です。

ここは、明治42年から43年に建てられた近代和風建築で、松濤園(日本庭園)に面した開放的な空間。
当時の宮家・富豪たちの間で流行った“西洋館の正面玄関に続く日本建築の大広間”という形式をそのままに、現在は披露宴や宴会、能狂言などの伝統芸能やライブイベントにも使用活用しています。
文化財のジブンゴト化
単に非日常感を担保し、ホンモノをホンモノたらしめることのみならず、いかにその文化的価値を世の中の皆さんに理解してもらえるかどうか・・・
SAMURAI REBIRTHの使命のひとつでもあります。
ここでの理解とは“単なる歴史のお勉強”ではなく、ホンモノに触れ、関わり、自分事化する、この営みを指します。
『文化財をジブンゴト化』できると言うプロセスは体験価値(マネタイズ要素)になる得るでしょうし、『文化財をジブンゴト化』できる人材が増えることによって、文化的豊かさに満ちた社会創造(ソーシャル要素)の一助になるものと信じています。

循環経済(サーキュラーエコノミー)
現在進行中の研究概要は、文化財(国指定名勝地)内で出る様々な廃棄物を堆肥化させ、それを特定の生産プロセスの原料として活用、さらにはそれを加工成形、文化財内(国指定名勝地)で再利用する、このサイクルの仕組み化。
文化財において、経済循環を生み出そうというチャレンジです。
※堆肥化:枯れ葉、廃材、残飯、もみ殻などを混ぜ合わせ堆肥にすること

出典元:環境省「環境白書」
上記バリューチェーンに人々が関われるよう仕組み化することで、『文化財を自分事化』できるきっかけになりはしないだろうか・・・
堆肥に関する専門家であり農園オーナーでもある鴨志田さんをアドバイザーにお迎えし、楽しく議論を重ねています。
循環経済によって文化財を保存・活用する事業モデルは存在しないため(少なくとも法人としては見当たらない)、「やりながら学ぶ」【Learning by Doing】を意識。
ちなみにこの【Learning by Doing】、私の好きな教育概念です。
⇒アメリカの哲学者/ジョン・デューイ氏によって提唱
ソーシャルグッド
文化財の保存には、その規模相応の資金が必要となります。
その多くは公費によって賄われており、私たち一人ひとりにとって実は身近な話でもあるのです。
『文化財のジブンゴト化』を目指す循環経済によって、経済的にも社会的も意義深い活動を行い、新たな文化財創造の先行事例をつくることもまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。
では。



コンポストによるたい肥化が文化財の経済循環と通底するという考え方、目からうろこでした! 持続可能性を追求するためには経済合理性が必要ですが、文化財の領域ではいまだその点が課題なのではないかと感じており、ご指摘されている循環経済という視点は一つの解になりえるのではないかと思いました。 文化財の観光活用というのはすでに多くの事例がありますが、「自分事化」というさらに踏み込んだ考え方は、法人の活動内容として取り上げられている「人材育成」とシームレスに繋がり得るような気がします。 皆さんの今後のご活躍とご発展を期待しております。