文化財廃材×革新的技術
- 健太郎 立花
- 2024年4月24日
- 読了時間: 5分
皆さん、こんにちは。
私たちSAMURAI REBIRTHは、地域に埋没し活用しきれていない文化遺産に対していかに付加価値を付け、地域にとって魅力あるコンテンツに磨き上げあれるかを使命とし活動しています。
活動のテーマは「地域の誇りを未来へ」。
文化財を主体に、ソーシャルグッドな観点から地域環境のあり方を追求し、サーキュラーエコノミー(以下:CE)にもとづく文化財の高付加価値化に努める中、文化財廃材を活用したアウトプットにチャレンジしています。
そのひとつが「畳REBIRTH」。(まだ途中経過ではありますが)
処理に困っていた文化財廃材(イ草、落ち葉など)を堆肥化させ、その堆肥でイ草を栽培・収穫・製品化し、再び文化財に格納する一連の営みです。
⇒イ草:不要になった畳、役目を終えた畳
落ち葉:庭園内に根付く落葉広葉樹
この営みに関わることによって、人はCEに則した文化財をつくる文字通りの当事者となり、文化的豊かさに満ちた自己実現、well-beingを成し得るものと考えています。
また、持続可能な文化財のあり方には、革新的技術が不可欠であるとも認識しており、現在、文化財廃材を加工資材とした出力装置としての3Dプリンタを新たな研究題材としています。
田中教授との出会い
個人的にその活動に注目していた田中浩也教授(慶應義塾大学SFC環境情報学部/デザイン工学,3D/4Dプリンティング,循環型都市)。
とあるExhibitionの会場で、田中先生自らがプロジェクトの事例をプレゼンされる場面がありました。
田中先生は自作3Dプリンタを手掛けたパイオニアで、鎌倉を拠点に3Dプリンタによるプロダクトで地域課題の解決に取り組まれています。
科学的知見、技術的なノウハウは言うまでもないのですが、地域に溶け込み共感の輪を広げていく泥くささを持ち合わせているスタンスが何より学びになっています。
加えて、田中先生を通じご縁をいただいた内閣府系研究組織、
マテリアル専門家の方などは、私たちにとって心強くもあり良き指南役と言えます。


革新的技術の採用
CEを実現させる上で、最新技術の活用は欠かせません。
3Dプリンタは、従来の工法とは異なり、データを読み込ませるだけで複雑な部材も簡単に生成できる技術です。原材料としてリサイクル素材を用いることも可能で、汎用性が高い技術であることから幅広い領域で注目されています。
柳川藩主立花邸 御花を舞台に例えるなら、大広間や料亭で使い古された畳、庭園内に散る落葉広葉樹、食物残渣として残るお茶葉やコーヒーかす、観光客がゴミ箱に捨てたペットボトル・・・
これらは簡単にフィラメント化(※)・ペレット化(※)することができ、思いのままに出力することが可能なのです。
※フィラメント:3Dプリンタで出力成形するための細長い糸状の素材。「熱可逆性樹脂」と呼ばれる合成樹脂。
※ペレット:フィラメントとは異なる粉状素材。フィラメントへの加工という工程を必要としないのがペレット方式の最大の強み。

棄物を利用可能な「資源」と捉え、有効活用することでCEの一端を体現する象徴的な取り組みになるのではないか、単なる造作物ではなく、持続可能な資源循環・地域循環の重要性を問うアート作品になるのではないか。
田中先生をはじめ、CEの領域に身を置く専門家やLab.のスタッフなど、様々な領域の方とご縁をいただく中で、構想の解像度がシャープになってきました。

実験
幸いにも、私たちの構想および事業計画に共感いただき、実験協力をいただけるA社様とのご縁が叶いました。
ローカルにこんなにも優れたLab.があったのかと、驚きと共に自身の感度不足を恥じるほどでしたが、私たちにとっては大事なパートナーです。
⇒何が優れているかと言うと、3Dプリンタなどの出力成形ラインのみならず、その前段である廃材の粉砕・仕分け・加工などのラインも保有。
先述の文化財廃材を粉砕し、どのような資材配合によって3Dプリンタで出力可能な加工資材に仕立てるか。
私たちはまずはこの工程について、愚直に実験を重ねる必要があります。
この工程で出来上がる加工資材が、3Dプリンタ出力時の品質に大きく影響するためです。
何分この工程は守秘義務および知財に関わるため、後々情報公開していければと思うのでご容赦ください。
プロトタイプ
例えばこれ、何だと思われますか?

タイトルをつけるなら「回帰の紋章」。
上部はイ草、下部は木材加工会社で不要になった端材を3Dプリンタで出力成形したものです。
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まっすぐに伸びたイ草は、したたかな生命力、そして自然へ回帰する本能を持ち合わせています。ベースの鉢は、世の中の複雑性や困難を表し、繰り返し打ち寄せる波のようですが、そんな世の中に立ち向かう勇敢な騎士のようにも見えます。
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このようなイメージでしょうか。

消臭・防虫、イ草の効能の実用も兼ねたインテリアの一方、こちらは南国風。
たまたま社内にあった観葉植物を活けてみました。
イ草も良いですが、オフィス緑化に最適かもしれません。
いくつかお問い合わせをいただいているのですが、家具雑貨ブランド立ち上げも視野に入れ、デザインのパターンを検討中です。
⇒助手が立体におこしてくれました。

ソーシャルグッド
課題解決や環境配慮などが全面に出ると、どうしても堅苦しくなりやらされてる感が強くなってしまいますが、資源循環によるイケてるプロダクトを創造する、という目的に対し、結果的に地域課題の解決・環境への配慮が叶うという考え方の方が共感を得られ、継続的なアクションになるものと考えています。
文化財廃材に革新的技術を掛け合わせることによってイケてるプロダクトを創造することもまた、ソーシャルグッドと言えるのではないでしょうか。



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